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【雪風流・空想小説】奉仕の宿・5日目・最終日 お昼休憩3
2014/02/07(Fri)
前回 奉仕の宿・5日目・最終日 お昼休憩2

 まだ、午後の試験始めには、時間がある。
(ちょっと一服したいな)と思うと、急にたばこの香りが恋しくなる。
「ちょっと表の風を感じてきます」
「AO様、あと試験開始まで20分くらいですが」
 すみれが、不安そうな顔で私を見る。
「直接、試験会場に向かいますので、ご安心ください」
「かしこまりました」
 そう言うと、一礼した。
「では、お願いしますよ」
「はい。お任せください」
 奈津美とすみれが揃って、答える。

 2人を部屋に残し、私は今朝、アスカと話した喫煙所に向かう。
 ドアを開けると、そこには誰もいない。
「良かった。またいろいろ言われても困るからな」
 ほっとした安堵感を感じつつ、胸ポケットに入れた、たばこを取り出し、そして口にしてから手で風を隠しつつ、ライターの火を入れる。
 グンと吸い込むことで、胸がいっぱいになる。
「ふぅーーーー」
 そして吐き出すと、心地よい感覚が体全体を駆け巡る。
「食後の一服が止められれば、たばこは無用になるな」
 ある後輩が言っていたことを、急に思い出した。
 一人なのに、苦笑いしてみる。
 そういえば、洋子女将の耳打ち、本当に困った。
 さて、どう対応したものか…。
 急に試験とは関係ないことに思いをすることになった。
「私などより、大道寺のほうが、よっぽどいいはずだが…」
 ただ、洋子女将の言葉にも、含蓄があった。
「AO様は、心のあるSMプレイをされます。力任せ、技量だけのプレイは重ねる訓練だけで可能ですが、心のこもったプレイは、精神的に心を高められた方でないとできないのです」
(そう言われても、な…)
 いまさら思うが、入門したての頃は、トップが大道寺、そして何名もの優秀な訓練生がいるの中で、技術点が一番低いド下手な私が、Y風流の師範の位をもらったのは、一番だった。
 SM伝道師の世界は、単にテクニックだけでなく、伝道師たる心構えをきちんと持つこと、そしてそれを隷嬢に理解させて実践に導くことができる者を選ぶと聞いた。
 ある人に言わせれば、それは単なる「エゴ」かもしれないが、それを言っていても始まるものではない。
 人の欲望、食欲、物欲、そして性欲、これら過去から確実に受け継がれている人の世界。
 その中にあって、SMとは、そしてその存在とは。
(いけない、また深部に入りそうだ。今は目の前の修了試験を確実に行うことが先決だ)
 
 カチャッ。 
「失礼いたします」
 ドアが開くと、こそにはアスカが立っていた。
「やはり、こちらだったんですね」
「よくわかりましたね」
「はい。喫煙をされる方は、食事の後は、必ずニコチンを欲しがると伺っています」
「こちらのホテルでの研修ですね」
「はい。おっしゃる通りです」
「なかなか、奥深く教えていますね」
 つい感心して、言葉に出してみたが、アスカはそれに触れず、
「AO先生は、何時にこちらを出られるのでしょうか」
「修了試験の終わり具合ですのて、まだ決めていません」
「そうですか」
「何か」
「是非、お見送りしたいと思っていたので、予め時間がわかるようであれば、女将に申し出たいと思っています」
「それは、恐縮です。でも、仕事を最優先にしてくださいね。本業あってのことです」
「お心づかい、ありがとうございます。今日は、女将の話では、ホテル従業員、そして研修生全員でお見送りするということでした」
「それは、派手すぎますね。裏口からでも良いくらいです。ははは」
「そんな訳にはまいりません。先生をお送りするのですから」
 驚くことに、アスカは真顔だ。
「ありがたいことですが、静かにホテルを後にしたいと思っていますので、そのことを必ず、洋子女将に伝えておいてください」
「はい。でも…」
「いいのです。それが、研修生の彼女たちにとっても、そしてみなさん、ホテルに勤められている方々へも。必ず伝えてくださいね」
 私は、少しきつめに、有無を言わせない眼差しをアスカに向けた。
「は、はい。わかりました。必ず伝えます」
「よろしくお願いしますね」
 元の平穏な表情に戻しつつ、アスカに話しかけた。
 そして、深くたばこを吸いこみ、そして吐く。
「そろそろ、試験会場に向かいたいと思います。こちらで失礼します」
「は、はい。失礼いたします」
 アスカは、背筋を伸ばして、そして最敬礼、深々と頭を下げた。
(つづく)
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