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【雪風流・空想小説】 静かなる隷嬢③
2018/07/09(Mon)
 店を出ると、日差しが少しきつく当たる。
 駅から離れるように、ゆっくりと移動をはじめる。
「Yさん」
「なんでしょうか」
「これから、どちらに行きますか」
「あやさん、これからお時間はあるのでしょうか」
「はい。今日は予定を特に入れてありません」
「わかりました。2人だけになれるところを探しましょう」
「はい」
「カラオケルーム、レンタルルーム、いろいろありますが」
「わたくし、Y様にごいっしょできるなら、どちらでも構いません」
「初対面の私を信用すると、言うことですか」
「Yさんは、眼差しが違います。人と真剣に向き合うことのできると感じました」
「それは、買い被りかもしれませんよ。ははは」
「失礼ながら大道寺様の視線も、何かしら同じものを感じます」
 おいおい、おれは「さん」で、大道寺は「様」かよ。
 まあ、まだ「対」の関係ではないから仕方ないか。
 雑談をしながら歩いてみるが、この辺には気の利いたカラオケルームはないようだ。
「カラオケルームが良いと思ったのですが、どうもパッとしたのがありませんね」
「2人だけで話ができれば、場所は特に、大丈夫です」
「あっ、あそこはどうでしょうか」
小路の角を曲がると、大人しめの看板が目に入る。
チェーン店ではあるが、ここなら合格点か。

 受付で手続きを済ませ、ひとまず2時間の枠を抑えた。
「お飲み物はいかがいたしましょうか。こちらがメニューでございます」
 あやにメニューを取るように勧める。
「最初は、何にいたしましょうか」
「Yさんは、何にされますか」
「少しアルコールをもらったから、さっぱりとレモンサワーかな」
「やはりアルコールですね」
 いたずらっぽい目線を投げかけてくる。
「私はレモンスカッシュにしますが、よろしいですか」
「アルコールなし、ということですか」
「はい。ふふふ」
「ははは」
「それでは、お部屋へどうぞ。お飲み物は、まもなくお持ちいたします」
 店員に促されて、部屋に向かう。
 部屋はエレベータホールの踊り場を挟んで、左に3部屋、右に1部屋。
幸い右側だった。
他の部屋も、まだ誰も入っていないようだ。

 部屋に入るとすでにカラオケのBGMが流れており、少し音が大きい。
「ボリュームを少し下げてもらえますか」
「はい」
 あやは手荷物を置きながら、機器の操作をして音量を下げた。
「ありがとう」
「いえ」
 ノックがされて、店員が飲み物を持って来た。
 一連の説明を手短に済ませると、部屋を出て行った。
「何か、好きな曲があればかけたらどうですか」
「ありがとうございます。後ほど、選ばせていただきます」
 遠慮したのか、それともあまり好きではないのかわからないが、CM的な音楽が流れる中での対面となった。

「さて、あやさん」
「はい」
「最初にお伺いしたいと思っているのは、なぜY流に志願してきたか、という理由を教えてください」
「はい。少し長くなるかもしれませんが…」
 そう前置きし、話を始める。
 これまでのノーマルな経験、SMとの出会いと体験、人間関係、そして最後にY流に志願した理由、などなど。
 ひとつひとつの話に頷きつつ、相槌程度の返しを行い、すべてを話してもらう。
 その語りは、まさに真剣、正直。
視線、態度、言葉の強弱から、真剣に受け止めることができた。
 どうも、これまで付き合った男性の運は、あまり良くないようだ。
 付き合った男性の性的な捌け口にされたこともあり、また他の友人にも貸し出しされるようなスワップ的な体験も積んでいる。
ただ、タトゥーなどの入れ墨、肉体改造などはされていないとのことだ。
 まだ若いが、女性本来の艶、年齢相応のものを引き出せるか、これは賭けになるかもしれない。
「色々聞かせていただき、ありがとう。いろいろな経験、体験を積まれたのですね。辛そうな内容の方が多かったようにも思いますが」
「お聞きいただき、ありがとうございます。でも、これで過去のことを話すのは、今日を最後にしようと思います」
「それは」
「はい。私としてはYさんを私が次に進むために、最後の先生になっていただきたいとの想いが募ったからです」
「相当、私も見込まれたものですね。ははは」
「これまでお会いした方、Y流でも面談は何回かいたしましたが、Yさんは何か違うものを感じます」
「どのようなところでしょうか」
「言い表すのが上手ではありませんが…」
 少しためらいつつ、言葉を選んでいるようだ。
「不思議なのですが、一緒に話しているだけで、安心感と言うのでしょうか、そのようなものが伝わってくるのです。これまで得たことのないようなものが」
「そんなオーラは、自分ではわかりません」
「Yさんご自身ではお感じにならないこともあると思います。Yさんから何かしらの波動が出ていることを、私は感じます」
 ひたむきに仕えようとする気持ちが、段々と出てきているようだ。
 これなら、私の理想形の隷にしていくことができるかもしれない、そんな感じを持った。
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