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【雪風流・空想小説】 静かなる隷嬢⑤
2018/09/23(Sun)
 あやさん、いや、これからは私の隷嬢候補だから「あや」と呼ぶことにしよう。
 前回の面談から1週間が過ぎ、本部から正式に「あやの調教」を行ってほしい旨の連絡があった。
 あわせて、あやのメールアドレスが付記されてあった。
 それでは、あやの都合もあると思うが、まずはコンタクトを取ってみよう。
 先日のお礼、正式に調教を行うことになったこと、また近日中に半日以上開けられるときは、いつかを返事するように伝える。
 20分ほどでiPhonに着信音が。
 先日のお礼も含め、私が調教を担うことになったことに対しての喜びと、心して尽くしていきたいとの文字が並ぶ。そして半日以上空けられる、調教候補日がいくつか書かれていた。
 一番早いのが、明日、土曜日の午後からとのこと。
 場所は、先日あやと会った蕎麦店を指定することにした。
 そして用意するものとして、着用しているものとは別にはだきを1組、またストッキングの新品を1足、持参するように伝える。
 最近のホテルは、コスチュームもドン・キホーテで売っているような安物ではなく、より実物に近いものを貸してくれるようになった。以前は、秋葉原や池袋などを隷嬢と回って、どんなものが良いか選ばせていたが、今はそこまで苦労せずに借りられる。
 以前コスチュームの充実度№1といえば、アルファー・インだったが、順次、入替えをしているようで、お気に入りの「JAL」のコスチュームがなくなってしまった。
 などと思いを巡らしていたが、「さて、久しぶりにアイテムの手入れをするか」と自分に言い聞かせて、物入の一角に格納している黒のバックを取り出した。
 以前に7泊の遠征調教から1年以上、久しく使用していないバックだ。
 当然アイテムに入れている電池は抜いてあるので、正常に稼働するかどうかを、電池を入れて確認する。ローター、バイブの低い唸り音が部屋に響く。
そしてアイテムの電池を装着し、準備万端。
次は麻縄だ。もう一度麻縄を解き、そしてアルコール消毒のウェットティッシュで丁寧に拭き清める。
 「パン、パン」と麻縄を両方に引き伸ばし、軟度を確かめる。使い込んだ麻縄もよい感じだが、多少芯が残っているほうが、私は好きだ。
 麻縄5本、ローター、バイブ、電マ、筆、洗濯ばさみ、細やかなアイテムもしっかりと確認していく。
「大体よさそうだな。よし、明日に備えるか。よし休もう」
 明日に期待して、ベッドに横になった。

 調教当日となった。
 アイテムを満載したバックを担ぎ、指定した蕎麦店に向かう。
 蕎麦店の営業は11時からだが、指定した時刻は12時半。
 大体10分前に暖簾をくぐる。
「いらっしゃ~い」
 いつも元気な奥さんだ。この明るい声を聞くと「今日も何かいいことがありそう」な気持ちになってくる。
「ビール、お願いします。それとカツ煮ね」
「はーい」と快活な返事とともに、板場に向かって注文を伝える。
「お待ちどう様。最初はビールね。今、用意してますから」
「ありがとう」
 早速手酌で、一杯飲む。
「う~~ん。うまいね」
「こちらもどうぞ」
 小皿に、沢庵が盛られて出された。
「ありがたいね、これを待ってました」
「どうぞ、ごゆっくり」
 そのような会話を楽しんでいると、入り口がゆっくりと開いた。
 淡い水色のワンピースに紙袋を持ったあやが立って、店内の私を探している。
「こちらに」
 声をかけると、一瞬「ほっとした」表情を浮かべて、こちらに向かって歩き出した。
「Y様、こんにちは」
「はい、こんにちは。どうぞ、おかけください」
「ありがとうございます」
 そう言って、あやは向いの席に腰を下ろした。
 やっと「さん」から「様」に変わったな。
「本日は、お忙しいところ、あやのためにお時間を作っていただき、ありがとうございます」
 そう言って、深々と頭を下げた。
「まあ、こちらでは軽く食事をして、そうしたら向かいましょうか」
「はい、よろしくお願いいたします」
「ビールもう1本と、コップ、お願いします」
「はーい」
「お待たせしました。こちらもできました」
そう言って、カツ煮とビールが運ばれてきた。
 コップを持たせ、ビールを注ぐ。
「乾杯。よろしくね」
「よろしくお願いいたします」
 カチンと心地よいグラスの音が響く。
「何か軽くおなかに入れてください。あっ、おなか一杯になると後が辛いから、適度にね。それと、あとこれも食べてください」
「はい。ありがとうございます」
 あやは、モリを注文した。
 あの面談から1週間、その後今日までの間にあったことなど、たわいもない会話で、食事を済ませた。
「そろそろ行きますか」
「はい。よろしくお願いいたします」
「じゃあ、お勘定、お願いします」
「は~~い、ありがとうございます~」
 支払いを済ませ店を出て、連れ立って駅とは反対側にあるホテル街に向かう。
「この辺は知っているところはありますか?」
「いえ。ありませんので、Y様のお好きなところへお願いいたします」
ホテルの看板だけしかない狭い小路に入り、さっそくホテルを選ぶ。
プレイは和室が似合うと思っているが、このホテル街で和室を備えているのは2つだけのようだ。
「こちらでよいですか」
「はい。Y様のお好みで」
広めの和室を売り物にしている、ホテルWに入ることにする。
 よかった。1つだけ空いていた。
 フロントで支払いを済ませ、キーをもらいエレベータで部屋に向かう。
 あやは、もちろん無言だが、多少緊張しているようだ。
「504号室だったね。こちらへ」
 私が先導して廊下を進み、あやを部屋に導いていく。
 504号室の前に立ち、キーで部屋を開け、あやを誘う。
「こちらです。中に入りましょう」
「はい」
 いよいよ、あやの調教が始まる。
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